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 これまで行ったことがあるようでなかった、こまつ座公演に初見参。

 1986年に映画「キネマの天地」(井上ひさしが脚本で参加)が公開された際、
 映画とは趣向を変えた舞台版「キネマの天地」も上演されたという。
 こんなによくできた作品をどうしてやらなかったのか不思議だが、
 今回、25年ぶりの再演らしい。

 舞台は1935年、日本映画華やかなりし頃。
 築地東京劇場に集められた銀幕のスター女優4人に
 新作映画の打ち合わせとして彼女らを呼んだ蒲田撮影所の監督・小倉と、
 その弟子の助監督、そして小倉がある任務のために雇った万年下積み役者が絡む。
 牽制しあうライバル女優4人の確執を描く前半部から、
 物語は1年前にこの劇場で亡くなった女優・松井チエ子(小倉の妻)の死の真相を
 探る真犯人追及劇へと移り――。

 出演者は7人のみ。おまけに密室劇で出ずっぱりなので
 手も抜けなければ気も抜けず、役者たちは大変だったと思うが、
 喜劇の見本のような笑いの絶えない前半部でさえ、
 ある種の緊張感が漂っていて(笑)、そのせいで舞台の空気がものすごく濃く感じた。
 
 私は木場勝己が好きなのだが、今回は泣きの場面をひとりで背負う役どころ。
 クライマックスの長ぜりふでは、客席のマダムたちがすすり泣く声も聞こえた。
 
 その泣きの涙の感動シーンから、
 最後にどんでん返しがあって、さらに二転三転……という井上ひさしマジックに
 客は引っ張り出したハンカチで目頭を押さえたり、大笑いの口を押さえたり忙しい。
 男3人を残し、静かな余韻の中で幕が下りると、いつまでも拍手はやまなかった。
 久しぶりに舞台でしか味わえない幸福感を堪能した気がする。
 

 
 実力派ぞろいの役者陣は、みんなさすがの演技でした。

 麻実れいの芝居を初めて見たが、還暦すぎとは思えないスタイルと存在感で
 華があるってこういうことなのかと思い知った。演技力はキャリアと努力の賜物だろうが、
 手足の長さや顔だちの美しさ、声の良さとかは、努力とはまた違う次元のもの。
 神様に選ばれた演劇人、みたいな感じですかね。

 あと、飄々としてつかみどころのない小津を演じた浅野和之。
 一番それらしくない人物が実は黒幕だった、的な立ち位置を自然に演じ、
 この人って芝居がうまいんだと改めて思った。三谷幸喜も浅野さん好きだし。
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2011.09.19 / Top↑
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